つれづれお多福日記

しがない社会人3年目女子のつれづれを語ります。

「あんた。親族みんな、後妻だろ。」

えっ、と思った。ドッと心臓が騒ぎだし、冷や汗が滲む。当たっている。たしかに、母は離婚、祖母は夫と若くして死別しているのだった。

このインチキに屈服するようで気に入らなかったが、嘘をつくのもおかしいので、正直に答える。

「…はい。」

占い師は、やっぱり、と目を細めてぐんと近づいてきた。デパートの化粧品売り場のような香りがむんと鼻につく。

「女の怨念が憑いてるよ。しかもうーんと強い。」

まいったな。こういうの、信じない派なのに。なのに、先程言い当てられたことを思い、背中が急に寒くなる。嘘でしょ。「いる」のか。ここに。

「女だよ。親族。家系で誰か、若くして死んだ人は居ない?居るはずだよ。その人だよ。」

祖母や母の思い出話をザッと振り返る。が、生前大工で頑固一本松と言われた大叔父の大捕物や、それこそ亡くなった祖父の優しいエピソードしか浮かばなかった。

「知る限り居ないですけど。」

適当言いやがって。勝った気になったが、それでも占い師は引き下がらなかった。若い盛りに亡くなった怨念で、代々祖母、母、そして私へと憑いているのだと。このままだと、あんたも後妻になるよ、と。ゲームに熱中する政行くんの後ろ姿が浮かぶ。にわかにバランと仕掛け絵本のように我が家のリビングが菊の花の段となり、ポンととれた政行くんの首が黒縁の写真立てにハマった。こらこら、ピースするんじゃない。君の葬式だぞ。ここまで想像したけど、彼はないか。だってもう別れようと思ってるくらいだし。

「分かりました。帰ったら、家族に聞いてみます。」

 

 

 

 

 

北区に帰宅

虚に文京区を歩く。ジメジメして蒸し暑い。マスクで顔はベタベタだ。
失敗ばかりの我が人生。
今日は20kgはあるキーボックスを真っ逆さまに落っことし、盛大な音で課内を驚かせてしまった。課長まで奥の小部屋から飛び出してくる始末。主任は困惑していた。先輩は悲しい笑顔で「しんどいね」と言った。幸い怪我はなかったが心はバキバキに砕けてしまった。その後は何をするにも虚で、電話のメモもおぼつかない。ノー残業デーに託けて、帰りの挨拶もそこそこにそそくさと退勤した。


つくづく、順序よく守備良く仕事が進むことなんてわたしには起こり得ない。
上手く行きすぎると途端に恐ろしくなる。必ずそのあと、倍の失敗を起こすから。


自分に自信がなくなると、なにもかも上手くいかなくなる。
わたしはあからさまに褒めて伸びるタイプだ。社会に出て知ったことだ。自分が求められる環境だと、持っている能力以上の力を発揮する。成長もする。
期待されていない、馬鹿にされている、微かでもそう感じてしまうと、一気に心が縮こまり、パフォーマンスは半分以下に下がってしまう。喋ればどもるし、手は震える。失敗ばかり起こす。
数分前の自分にビンタしてやりたい。そう思うことが度々ある。なんでこんな不安定なところに重たいものを置いたかな…。冷静に考えればすぐわかることなのに。失敗した自分は惨めで恥ずかしい。誰にも見えない姿になってそっと世界から消えてしまいたい。
今日もそんな思いで、南北線に乗り、帰宅する。

ピーターパン症候群

わたしには、圧倒的に足りないものがある。

 

それは責任感です。

 

いつからでしょう。

 

中学二年生で、

先生からのアツい推薦で

務めた生徒会長。

日々の業務をこなす中で、

自分はその器ではないのではと、

薄々感じてしまった時から?

 

高校入学して、

自分がどれだけ井の中の蛙だったのか

気がついた時から?

 

わたしは何かをあきらめ、

自分に自信をなくし、

積極性を失い、

誰かがやるだろう、

わたしは気がつかなかっただけ、

だから出来ないのも

やらないのもしょうがない。

 

と、理由をつけて、

何かを責任持ってやり遂げることから

逃げる癖がついてしまいました。

 

飽きっぽい。

冷めやすい。

責任感がない。

逃げグセがある。

注意力30000。

 

いや、散漫です。

 

注意力30000ほしいよ。

 

みんなすごい。

大人ってすごい。

なんでみんな、そんなに仕事に

責任を持てるの?

 

いつからそうなったの?

 

わたしはどうして、できないの?

 

なんかの病気なのかな。 

 

成し遂げた!ってことが、

一生において、

ひとつでもあるといいのに。

 

わたしにはそれがない。

 

絵が好き。

本が好き。

歌が好き。

食べることが好き。

 

でも、なにもできない。

なにも残ってない。

 

ゴロゴロするの好き。

お昼寝もっと好き。

ピクニック好き。

YouTube見るの好き。

お買い物好き。

クーラー好き。

オシャレ好き。

キャラクターもの好き。

流行り好き。

旅行好き。

博物館好き。

図鑑好き。

家族好き。

彼氏好き。

友達好き。

 

好きをつなげて、

それだけで

生きてゆければいいのにね。

 

 

 

 

 

しあわせって

 

なんなんでしょうか。

 

実家から東京に戻る時、いつも考えます。

 

同級生の中には、この街で就職して、この街で結婚して…という道を選ぶ人もいます。

 

わたしだって、世界で一番ママとパパがだいすき。

二人の娘でいられる時間が、一番しあわせ。

 

でも、東京で就職して、一人、暮らしている。

 

何が一番の、わたしのしあわせなんでしょう。

家を出て、東京で働いて、結婚して、子供を育てて…。これは、わたしが本当に望んでいた未来なのか?

やっぱり、実家でママとパパと暮らして、ずっとこのままで、いようか。

 

 

…ここまで考えて、でも、と思いとどまります。

 

都内にいる彼。友人。いましている仕事。人の多さ。きらびやかなお洋服、飲食店。

 

価値観が、変わっていく自分が確かにどこかにいるんです。

これは、少し寂しいけれど、きっとわたしにとって必要なことだと思うんです。

 

ママ、パパ二人の娘であるわたしから、一人の大人であるわたしに変わるために。

 

この変化は、認めるに本当に寂しいものです。

今まで3人ですごした時を思うと、胸がぎゅっとなって、もう二度と戻らない時間に涙が出ます。

 

でも、きっと必要なんです。

明日も仕事がんばろう。